鴻ノ池(こうのいけ)

鴻ノ池(こうのいけ)

鴻ノ池のイメージイラスト

市川(いちかわ)の坂下というところに、「鴻ノ池」と呼ばれる一画がありました。
ある書物には、「いまは崩れて形は残っていないが、泉があって片葉の葦が生えている」とあり、別の書物には、「池の中に石があり、石の上に鴻の足跡があるのでその名がある」と記されています。
また、市川村(明治22年に合併して多賀城村になった)の記録によると、多賀城に鎮守府将軍がいた頃、そのあたりは、井戸を掘っても海水が入り、飲むにも田畑にも使えなかったそうです。

そんな「鴻ノ池」にはこんなお話が残されています。

将軍が「井戸を掘っても良い水が出ずに困っている」と都に住む母に伝えると、母はそれを嘆き、一心に祈願しました。するとある時、坂下に一羽の鶴が飛んで来て、石の上に止まったのです。ふしぎなことに、鶴が飛び去るとその石は次第に沈み、井戸となりました。この井戸はどんな干魃(かんばつ)にも涸(か)れることがなく、辺りには片葉の葦が茂っている、ということです。